地震の後。トリアージ。そして 地震ストレスと生活習慣病 松尾武文 [書籍・雑誌]

地震のメカニズムや原子力発電および放射能に関しての話題がいままでは主流だったが、これからは如何にこの状況をリカバリするかに集中していきたい。(確かに余震も続いていて気が抜けない状況であることには違いない。これも事実。)

で、今回も島崎邦彦教授らがまとめた著書”あした起きてもおかしくない大地震”から抜粋させていただく。

あした起きてもおかしくない大地震 21世紀地震アトラス (21世紀・地震アトラス)

あした起きてもおかしくない大地震 21世紀地震アトラス (21世紀・地震アトラス)

  • 作者: 島崎 邦彦ほか
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2001/07/05
  • メディア: 単行本



「地震ストレスと生活習慣病」 松尾武文 兵庫県立淡路病院名誉院長

■突然、大地震におそわれたら、まず
 まず自分の安全を確保しましょう。家族に声を掛け合って相互の安全を確認しましょう。揺れは非常に長く感じられますが、何分も続きません。大きな揺れがおさまったら、自分の安全を確認しながら周囲の状況を理解してください。
 不幸にして家屋の下敷きになったり埋もれている人がいたら、救出にあたりましょう。二次災害に十分気をつけてください。また、余震に教われてしばしば作業は中断しますが、止むを得ません。本震より大きな余震は無いといい聞かせながら、作業をすこしずつ続けてください。無理をしないで、近隣や通行人の人に応援を遠慮なく求めてください。多くの見知らぬ人の好意にはきっと感謝します。

■医療を必要とする緊急事態が起こると
 地震当日は圧死をはじめ、外傷、骨折など外科、整形外科の病気が中心となります。
 被災地の中心に近い医療機関は、麻痺状態になります。直後から近隣の軽症の人々がどっと来院し、大混乱になります。下敷きになったり押しつぶされて大けがを追った人たちが病院へ搬送されてくるのも重なります。重傷者のなかにはすでに死亡された方もいらっしゃいます。
 多数の瀕死の重傷の方々の中から、本当に助ける事が可能な人々を選別する作業をトリアージといいます。結果として、軽症の方々や重症過ぎて救命できない人々は、治療の対象からはずされることになります。
 災害拠点病院といえども、十分な病院機能が立ち上がるまで相当の時間がかかります。整然とトリアージが実施され、適切な医療が行われることを被災地の中心の病院に期待するのは無理です。
 大混乱の被災病院で、不安な思いをしながら何時間も待つよりも、思い切って、被災地外の病院を目指してください。それも断層線から直角に遠ざかれば遠ざかるほど、暖かく受け入れられることは間違いありません。なるべく自分たちの努力で怪我人や病人を搬送してあげてください。救急車は圏外への搬送は不慣れですし、最寄りの医療機関への搬送が中心となります。
 なかでも、落下物により四肢の筋肉が押しつぶされた場外が続きますと肝臓が駄目になり、無能になるクラッシュ(座滅)症候群が起こります。この治療には、水と電気が必要です。そのため地震災害時には、ライフラインの途絶した災害病院から被災地街の病院へ患者の転送が余儀なくされ、治療開始までに長時間かかることになります。
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■地震ストレスが直撃します。
 日常生活の中でも様々なストレスを経験しますが、壊滅的な自然災害は、ストレスとしてもっとも強く、「破局的」に分類されています。「破局的ストレス」には、たとえば、子供の死や配偶者の自殺といった事態も含まれています。救出作業が一段落すると、避難生活が始まります。ライフラインが途絶し、明かりもなく、トイレや空調が使えない環境の中での生活は強いストレスになります。このため肺炎、胃腸炎、睡眠障害、脱水など様々な内科的疾患がおこります。トイレに立つと自分の場所がなくなるからと水分を我慢して、脱水症になられた方もいました。共同生活では少なくとも屋内の禁煙を実施してください。
 阪神•淡路大震災では、北淡町で地震ストレスが高齢者を直撃しました。その結果、直接の外傷や骨折を免れた高齢者の中で、心臓や脳の血管系の疾患で病死される人たちが急増しました。地震は、強いストレスとなり、交感神経をかいして身体に様々な障害を招きます。もともと生活習慣病といわれる疾患をもつ高齢の方は、血管系が脆いことが原因で、動脈硬化を起こしやすくなります。
 生活習慣病を持つ人が、災害時に突然の胸痛、頭痛、意識消失発作に襲われたら、直ちに医療機関を受診してください。

■心臓発作が増加します。
 阪神•淡路大震災で北淡町では31%の家屋が倒壊し、町民の34%が避難所での生活を余儀なくされた結果、住民の心臓発作による病死は2倍に跳ね上がりました。地震の直接ストレスだけではく、避難所での慢性のストレスも心臓に思わぬ負担をもたらします。
 地震ストレスは、心臓を直撃します。淡路病院での心筋梗塞の患者数は平年と比較して、地震後に急激に増加しました。1月17日〜23日、地震直後の1週間において、淡路病院での心筋梗塞の患者数は平年の6倍に増えました。心筋梗塞は、心臓の栄養血管である冠状動脈のなかで血液が固まり血栓ができ閉塞するため、心臓のポンプ作用が無駄になる重い病気です。背景には、生活習慣病といわれる糖尿病、高脂血症、高血圧があります。
 心筋梗塞で入院された患者さんでストレスの程度を面接調査すると、高齢の女性がストレスに弱い事が分かりました。生活習慣病を持つ高齢の女性では、心臓発作が起こりやすくなるのです。
 また糖尿病の患者さんへの地震の影響は、食生活の乱れから血糖のコントロールを乱す人、血糖硬化剤を飲み忘れたり無くしたりする人、食欲がなく小食になりかえって血糖値が改善された人と様々でした。まず血糖や尿糖を測定し、自分の糖尿病の状態を理解することが大切です。
 ストレスが主な原因となる消化性潰瘍は、心臓発作のように地震直後ではなく、以前から潰瘍の悪化や、ストレスに弱い人の中から吐血や下血での発症がみられました。普段から胃の強い不調感じたら、とりあえず便の潜血検査を受けてください。

■血圧が一時的に上昇します。
 阪神•淡路大震災では、震源地に近い北淡町国保険診療所で、高血圧の患者さんの血圧が跳ね上がりました。地震後に血圧が高いと言われたら、それが一時的な現象か、長く続くものなのかの鑑別が必要です。
 前回の地震で、仮説診療所で不用意に降圧剤を処方され、ふらつき、めまい感、立ちくらみといった副作用に悩まされた一時的な高血圧の人たちをみかけました。
(松尾武文 兵庫県立淡路病院名誉院長)

教訓と対処方法に関して、記載してある大変価値のある記事だと思った。

また、このトリアージだが瞬時で的確な判断を求められる作業。集中力と判断力が鍵。ということだ。
企業のトップの判断にも似たところがあるかもしれない。

ではでは。
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