LOG撮影ってなに?(その4)技術編 〜基礎②〜(LOGと呼ぶ理由)  [動画撮影]

前回の記事で、(広義として)ガンマ特性とはなにか?

LOG撮影においてガンマ特性は、どんな背景をもつのか。に触れた。

もうすこし、LOG撮影 それもガンマ特性に関して触れてみたいと思う。

■名前。なぜ ”LOG" 撮影 と呼ぶのか?

このLOG(ログ)。数学Ⅱでならった対数のlogarithm の事である。
ガンマ特性を横軸にInput (露出)、縦軸にOutput(ビデオレベル)をとったときに
横軸を対数軸(LOG)表現すると表現しやすい。扱い易い。というのがLOG記録の
語源となっている。

では、なぜ横軸に対数(LOG)で表現すると便利なのか。

①LOGは、人間の五感(など)をあらわすのに向いている。(人間の五感は対数のように振る舞う)[1]
(そうそう、カメラで1段(1Stop), 2段(2Stop), という表現を多用するが、これもLOG。
 底数2の対数表現。LOGと聞いて驚く必要はない。多くの人たちがをれを無意識に会話をしているのが静止画カルチャーということである。それだけ自然に溶け込んでいるともいえる。)


②LOGは、大きな数字を扱うのに向いている。(精緻な計算には向いていないがザックリ素早く計算するのに大変便利なツールである。)
(計算尺がまさにそれ。対数表現を活用したアナログ計算機とでもいうか。いまのようにPCが普及するずっと昔は、計算尺をつかって土木建築の強度計算から航空宇宙関連機器の設計、軌道計算などもやっていたときく。)

sliderule01.jpg

③ガンマ特性グラフの縦軸;ディスプレイ側の出力レンジは、0〜109%とITE709で決まっていて。(規格)

スライド8.JPG

④ガンマ特性グラフの縦軸;そのビデオレベルを表現するのにコードを割り当てている。
 つまり現代のカメラは、デジタル信号処理をしているのである。
→縦軸も横軸も離散値である。(サンプリング数が諧調表現となる。)
→8bit 処理ならば256諧調。10bit処理ならば、1024諧調 と有限な諧調で表現しなくてはならない。
(余談:もしこれがアナログ信号処理であったらこの発想はない。LOG記録は、デジタル信号処理であることが前提である。)

スライド9.JPG

⑤ガンマ特性グラフの横軸
反して、カメラ側のダイナミックレンジは、メーカー毎、モデル毎に自由度をもっていて、より表現の幅を制作者に与える為にデバイスおよび、カメラシステムの開発をかさねワイドダイナミックレンジ化が可能であり、事実各社ワイドダイナミックレンジ化を進めている。

スライド10.JPG

つまり、
各映像制作者が拘りの画作りを十二分に楽しむ為に、ワイドダイナミックレンジ(暗いところから明るい所までとらえられる)カメラを提供しようとしても、有限な諧調(サンプリング)を有効活用しようとしないと明らかに諧調不足の画になってしまう。

8bitなら8bitでVC(ビデオコード;諧調表現のためのステップ)256を人の五感にあわせてノンリニアに振り分けてあげればよいのである。
人の目は、暗い所で敏感。明るい物に対しては鈍感。
→暗所での表現には、VCをリッチに割り振り、明るい部分の表現には、VCを大雑把に割り振る。と
 限られたVCで効率的に1枚のフレームの中での暗所から明るい部分までを上手に表現することが可能になるのである。

人の目は、暗い所で敏感。明るい物に対しては鈍感。という変化をあらわすのに対数表現が有効なのである。

横軸が対数、縦軸がリニアで表現したときに、ガンマカーブが直線で表現された場合が人の光(刺激)にたいする感覚が一番すなおな状態である。と表現されるがこれが分かれば納得していただけると思う。それがまさにフィルムの特性であり、それをデジタル変換するために生み出したCineon Logなのである。

スクリーンショット(2015-10-04 18.44.45).png

ついでに、もうすこし突っ込んだ表現をしておく。
ガンマ特性(つまりガンマカーブ)は、信号処理のビット数(サンプリング)とダイナミックレンジとのバランスで適性な設計が必要となる。撮影シーンのなかでの暗部から中間域、もしくは、中間域から高輝度域などどの輝度エリアを重視した画作りをしたいかによって最適なガンマ特性は違う。ということになる。

離散値(有限なコード)で自然現象を表現しようとしているかぎり、諧調破綻(バンディング)をおこしてしまう可能性は回避できないと思う。だが、その可能性を少しでもすくなくするためには、ビット数(有限なコード数)を上げること。それが出来ないのであれば、ガンマ特性(諧調の割り振り)を調整するしかない。

また、ダイナミックレンジは広いに越したことはないが広くすればするほどこの諧調不足を引き起こす可能性も増えてくる。単純にハードとしてダイナミックレンジが広げられるから広げた。というのでは片手落ち。描写表現領域において適性なガンマ特性を設定して上げる必要がある。

各社そんな苦労をしながらガンマ特性に味付けをしている。それは、なによりもより多くの撮影シーンに対応可能なLOGカーブを作ることを目的としている。[4]

スクリーンショット(2015-10-10 17.17.32).png


(LOG記録ってなに?(その3)技術編 〜基礎①〜(ガンマ、ガンマカーブとは)http://mike-shimada.blog.so-net.ne.jp/2015-10-04-2 の文中でこんな風に表現した。

『■はじめに
 もっとも『LOG記録』の特徴をあらわしている表現をあげておきたい。

①『LOG記録とは、限られたデーター数でより効率的に映像表現するためのデジタル映像信号処理
 技術のひとつである。』』

ここまでの説明で
この意味が少しは、理解していただけるのではないだろうかと思う。

まだまだ、かみ砕けた表現が出来ていないように思う。大いに自省している。

だが、同時にLOG記録を理解する。ということは、段階を追って少しずつ理解をふかめていく。という努力を多少なりとも重ねないといけない。というのが正直感じている所でもある。

僕がしきりにリストアップしている参考文献なども合わせて読むことをお勧めしたい。




次回は、LOG記録ってなに?(その5)技術編 〜基礎③〜(Gamut 色域 にかんして)

LOG(対数)、指数。。。高校時代にしっかり勉強しておくんだった。[5] 

ではでは。

[1]『人間の五感は対数に変換されている ・・・ウェーバー・フェヒナーの法則から平均律音階まで・・・』http://www.rd.mmtr.or.jp/~bunryu/5kanlog.shtml

[2]人間の「視覚のガンマ」
http://compojigoku.blog.fc2.com/blog-entry-23.html
スクリーンショット(2015-10-04 20.12.45).png

[3]
『何故、CineonはLogと呼ばれるのか?』(キヤノンHP)
http://cweb.canon.jp/cinema-eos/special/canon-log/history/index.html

[4]『LOGとLUTの基礎講座』(富士フィルムHP)
http://fujifilm.jp/business/broadcastcinema/solution/color_management/is-mini/promotion/pack/pdf/news/20150122_jppa.pdf

[5]

1週間でツボがわかる! 大人の「高校数学」

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  • 作者: 小林 吹代
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2010/10/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



[6]知ってても全く役にたたないこと(APEX値)
http://reflex.sakura.ne.jp/boa/photo/photo107.htm
スクリーンショット(2015-10-04 20.41.44).png



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