”事業戦略”と”ブランド戦略”との関係 〜 その①〜 [講演会・セミナー]

先日、聞いた話に触発されて久しぶりに”戦略論”について考えてみようと思う。最近は、戦略とかライバル他社との競争という視点から距離を置いていた。
 
 というのも、Why何のためにその企業は存在しているのか? を明確に持つこと。それが世の中の人たちを幸せにすることに直結していることが何よりも大切だという考えを大切にしたいと考えているからである。僕自身この考え方に変化があったわけではない。恩師、黒須誠治らからの第一の教えとして大事にしている。http://www.f.waseda.jp/cross/index.htm 

実際、その目に見える部分以上にその企業の理念、哲学が問われる時代になっていることも間違いないとも思っている。その背景にあるのは、市場の成熟化(物理的に裕福になる局面を超えて、精神的に余裕が生まれていること)とインターネットなどによる情報の透明性が上がったことが背景にあると思っている。

だれが、何をどうやって作っている、提供しているか。という点以上に、なぜその企業がその製品、サービスを提供しているのか。という哲学に共感できるかどうかが顧客の関心事になりつつある。もちろん、世の中全体がそうなっているわけではないが、その方向に世界市場は動いているのは間違いない。と思わされることが多い。人として正しいか。大義名分をもってことにあたっているか。ますます、大切になるであろう。

そういう視点を今日は多少離れて、マーケティングの戦術、テクニックに焦点あてた内容から話を始めてみたいと思う。

そのきっかけを作ってくれたのが①この動画。と、②社内で受けたセミナー

①「生き生きとした髪をつくる」そんなコンセプトの製品を見事な手法で表現。まさに五感に直結した広告といえそうだ。いろんな広告手法の可能性を感じさせてくれた広告といえるだろう。[1]日本企業(JR関連企業や、大手日本企業でもデジタルサイネージ、もしくは自販機に付加機能を付ける試みもされているが、広告としての華やかさやセンスを感じさせるものが無かっただけにこの広告には感心してしまった。テクノロジーと感性をどう組み合わせるか。がポイントなのだろう。その際もテクノロジーありきよりも、伝えたい物、事ありき。で考え、最新テクノロジー動向を見極める。そんな行ったり来たりの思考を繰り返しながら行きつけるのかもしれない。)




②社内セミナー;日本ブランドのグローバルブランド戦略(実際の題名は、違う。敢えてアレンジした)講師は、フロンテッジの岡崎茂生さん。中国市場での経験、知見をもとに日本企業がブランド戦略をどう捉えるべきかに迫る内容だった。以下、そのセミナーで知った、気付いたこと。(より詳しくは、岡崎さんの記事 [2][3][4]

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 グローバルというと全世界で画一化された広告をする。というように捉えるかたが多いが、とくに中国などを例にとるとグローバルに考えて、ローカル化でその国、エリアにアプローチすることが如何に大切かが分かる。ブランドへの先入観、イメージを決める要素はいくつかあるが、その中でも大切なのは、RELEVANCE(共感)。その市場において共感、共鳴してもらえないとブランドのイメージ、価値は上がらない。その際には、分かってもらうという姿勢やアプローチが鍵になる。中国のようにブランド名などは、かならず漢字表記が義務づけれている。その結果、中国の方々は英語などのブランド表記はあくまでデザインでしかなく、そのブランドロゴを読もうとすることもないし、読めたとしても日常会話では、中国表記したブランド名で呼び合う事になっているそうだ。(中国での漢字ブランド表記方法には、大きく分けて3種類ある。
■ひとつは、発音重視型。漢字そのものの意味よりもオリジナルのブランド名の発音に極力近い漢字をあてる方法。
■もう一つは、漢字の持つ意味を意識して多少、発音がオリジナルから離れてしまっても良しとする方法。日本ブランドの多くは、発音を重視する傾向が強いが反面、漢字文化の中国の方には各々の漢字がもつイメージがブランドのイメージに影響してしまう。という落とし穴にハマっているとも言う。
■3つめは、もともと漢字名を企業名、ブランド名としている会社の場合。たとえば、全日空。そのまま漢字表記が可能である。が、ここにも落とし穴がある。オリジナルと同じ漢字がつかえるが、意味がまるで違うことが多い。全日空を中国の方に見せるとこうなる。”まいにち空席” 

漢字は、ローマ字とちがい文字一つ一つに意味を込めている。加えて、日本で使う漢字と中国とでは意味が異なることが多い。これが日本企業が中国でブランド活動をする上での足かせになっているのは間違いがない。

グローバル戦略という一語で、いろいろな事がひとくくりにかつ、画一的な施策が正しいとされる風潮が最近益々強くなっている。効率性やグローバル企業としてのイメージ作りとしては正しい面はあるが、なにもかにもこれ一本で行く。というのは簡単なことではないし、それが本当に正しいのかというと疑問に思う事も多い。全世界完全統一のブランド戦略で思い出すのは、アップル。 ビルボード広告もネットもお店づくりも全て全世界で画一化が図られている。これは、アップルの強みである”製品ラインナップがシンプル” ”企業メッセージがシンプル”がであるこが可能にしているのであろう。[8]

それに対して、グローバル戦略を前提とした、ローカライゼイション戦略つまり、グローカライぜーション戦略をすすめているのがサムソン。以前のソニーもそうだった。 サムソンの場合は、韓国、中国、日本、US と それ以外という分け方で事業戦略を区分けしている。たとえば、彼らは製品カタログをプロモーションツールのひとつとして、製品開発時のツールとして重きをおいて扱っている。そのカタログは、今述べた韓国、中国、日本、US と それ以外で違う。そもそも韓国では、製品ごとにサブブランドを使用しているがそれ以外の国ではサブブランドの使用は認めていない。サムソンのTVだったり、カメラだったり。型名はそれぞれあるがサブブランド名は使わない。中国に関しては、後から触れなおすとして、日本。日本ではご存知のようにサムソンのビジネスはまだまだ小さいので広告に力は入っていない。USでは、カタログはあまり作っていない。CESなどのショーの時につくる印刷物が主なカタログとなっている。それ以外の国の広告は、すべて同じクリエイティブ。印刷作業やローカル言語化は現地の販売会社の業務となっているようだが、基本のクリエイティブは本社から届いたもの。[9] 
 実際、以前世界各国のサムソンのカタログを海外駐在員の友人・知人にお願いして集めて確認したことがあるが、この話に間違いは無かった。


下記、実際自分の目で確認したくて大勢の協力を得ながら調べた結果。(2011年当時)
(いまさらながらに協力いただいた皆さんには感謝感謝です。その説は、ありがとうございました。)
これらのマーケットからカタログを収集。(デジカメとTVで確認作業を進めた)

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基本は、統一のクリエイティブだがローカルのカルチャー、イベントを盛り込むうな変更もあったりする。
(例)これはイタリアでのバレンタインデーを盛り込んだもの。

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韓国国内市場においては、Samsung、LGはカテゴリー毎にサブブランドをもっている。たとえば、TVならばPAVV,冷蔵庫は、Zioei、そして空調器具に関しては hauzen。携帯電話はAnycall(ちなみにこのAnycallはなぜか中国市場でも使われていることが今回調べてみて、再認識できた。)

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ここでグローバル戦略を今一度整理してみたいと思う。

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池上重輔氏によると、一般的にグローバル経営とみんな口にするがいくつかのタイプがある。

①グローバル経営(日本企業に多いタイプ)
 本社がすべてにおいてイニシアチブをとりオペレーションする。各ローカル企業は、本社の意思に忠実に動く出先機関のような役割に徹する。(たしかに日本人の多くは、グローバル経営というとこのタイプをイメージしているように思う。それ以外の形態があると考えることすらないかもしれない。)

②インターナショナル経営(US企業に多いタイプ)
 HQとローカル企業とが、Evenな関係でオペレーションしているタイプ。製品ラインナップなども場合によってはローカル化が進められている。(国によって取り扱い商品が違ったり、製品名称が異なったりする。)

③マルチリージョン経営(Europe企業に多いタイプ)
 HQよりも各ローカル企業に裁量がある。HQは、ブランド管理をするなどに徹している。オペレーションはローカル化が進められている。

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昔のソニー、盛田昭夫氏が指揮を取っていた頃は、さらに複雑にグローカライゼイションをソニーの経営指針としていた。と言われている。Europe市場においては、マルチリージョン(つまりEuropeの販売会社に委ねる)。US市場においては、インターナショナル経営(US販社と日本のHQとがEvenの関係)。それ以外の一般海外市場と呼ばれた市場においては、グローバル経営(日本HQが完全掌握する方針。現場の経営陣も日本人が就いていた。)

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さらに話は複雑。実は、グローバル経営といっても、完全に一企業がグローバル経営型で運営しているわけではなく、業務内容によってグローバル、インターナショナル、マルチリージョン型を使い分けているのが実際ではある。

”事業戦略”と”ブランド戦略”との関係 〜 その②〜 につづく

ひとまず、ではでは。


[1]マーケター必見!スウェーデンの地下鉄で行われたPR手法が秀逸すぎる Apotek Hjärtat - Blowing in The Wind  http://whats.be/7487
[2]岡崎茂生(著)『がんばれニッポンブランド—中国市場からグローバルブランディングを考える—』(ブランディング新時代HP) http://www.yhmf.jp/pdf/activity/adstudie/vol_32_01_06.pdf
[3]岡崎茂生(著)『なぜ中国で、日本ブランドは売れないのか?』(東洋経済ONLINE) http://toyokeizai.net/articles/-/12259
[4]岡崎茂生(著)『 中国でのブランド戦略は今見直さないと手遅れに 』(日経ビジネスDigital) http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20130128/242898/?ST=pc
[5]岡崎茂生(著)『ジョブズを演じた俳優がレノボに「入社」代言人」を超えたアシュトン・カッチャーの任務 』(東洋経済ONLINE)http://toyokeizai.net/articles/-/28775

[6]早稲田大学ビジネススクール 黒須誠治研究室 修了生・博士課程の研究テーマ http://www.f.waseda.jp/cross/MBA_MOT.htm 

[7]ケロッグ・ビジネススタイル・ジャパン(編)『ソニー中国成功の影の立役者 添田武人』(Kellogg Club of Japan)http://kelloggbiz.jp/interview/vol10/

[8]ケン・シーガル(著)林 信行(訳)『Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学』(2012NHK出版)

Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学

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  • 作者: ケン・シーガル
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/05/23
  • メディア: ハードカバー



[9]飯塚幹雄(著)『市場づくりを忘れてきた日本へ。』(2009しょういん)
市場づくりを忘れてきた日本へ。

市場づくりを忘れてきた日本へ。

  • 作者: 飯塚 幹雄
  • 出版社/メーカー: しょういん
  • 発売日: 2009/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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