僕も靴を磨こう!Berluti (ベルルッティ) [講義・授業]

先日、授業にて講演いただいたBerluti (ベルルッティ)社長の今村さんの話は、実に見事にMBA生徒向けに練り上げられていたと思う。社会人MBA受講者が気にしそうなポイントを許される限り定量的に、かつ定性的に解説してもらった。僕らからの質問に対しての回答も質問者の意図がしっかり反映されたものになっていて、手応えを感じる90分だった。

◆定量面での事例紹介
 確かに定性的な解説が多い。これは機密事項保持のためにはしょうがない。だが、そのなかで定量的なアプローチが進んでいることを示唆する説明があった。その一例がマーケティング活動にまつわるROI測定と活用だ。
 Berlutiの場合は、週次の効果測定を徹底化し、より効果の高いメディアへの露出を集中させるまた、効果をメディア・代理店と情報共有し、次へとつなげていくことを意識的に徹底的にやっているそうだ。そのためには、VOC、ヒアリング結果などは、広告代理店、メディアなどとも共有する。それを根拠に各メディア、雑誌会社に対して、オタクの広告を増やすとか、減額するとかのやりとりをするし、そういうやり取りが機能する。とのことだ。広告活動にまつわるROIに関しては、頭を悩ませている。広告と売上げの因果関係が説明つかずズルズルと慣習に基づいて広告活動しているブランドが殆ど。マーケティングの担当者も、広告代理店らもいろいろ言い訳をしながらおざなりにしているのとは好対照だ。示唆が大きい。大いに参考にしたい。

◆定性面からの解説の数々。
 正直、Berlutiというブランドを僕自身認知していなかった。そこそこブランド名は知っている方だが、それでも知らなかった。それだけに見ること、聴くことすべて新鮮だった。と同時に今村さんの話を伺いながら感じたことは、一貫性があり、かつ美しい戦略を実践されている。という点だ。
 「靴に魂を吹き込む!」というメッセージとともに、顧客にとってのBerlutiに対する印象を決定づける「真実の瞬間」をなによりも大切にされているのが明確に伝わってきた。その一貫性をもったブランディング活動の骨格として
①店舗開発
②顧客・商品開発
③人材育成
が位置づけられている。それが実に見事に調和していると感じさせられた。いい戦略はやはり美しいのだ。

①店舗開発
日本市場への参入戦略は、LV(J)と酷似している。他の高級紳士靴ブランドがすべて代理店によるネットワークチャネルを選択したのに対して、Berlutiは当初から直営販路にこだわっている。
路面店は、Berluti独自の世界観を表現するための直営店。
百貨店は、(女性偏重のフロアレイアウトを要する)百貨店の1階常設店舗と路面の角を獲得。
常識ハズレと言われようと、自分たちのポリシー、戦略に従ってアプローチしてきた姿勢がそこに現れていると感じた。

②顧客・商品開発
 ここでぐっときたのが2つ。ひとつは、既存顧客との関係性向上のためにCRM活動を実に見事に進められている事。ニッチなマーケットだけに濃さも半端ない。”クラブ・スワン” 「Berluti  パティーヌの集い」がその典型例だろう。イベントそのものにストーリーがあり、ブランドとお客様との関係づくりだけではなくそこにお客様同士のコミュニティも形成される。同じ趣味、嗜好をもつ上質なお客様同士の繋がりだけに、そこに集うことへのモチベーションもかなり高いものになっていることを想像する。
 もう一つは、商品開発。それもローカル市場からのフィードバックとそれに対してのアクション。これは本社もローカル販社も共に協力しないと出来ないこと。お互いをリスペクトし合っている。コミュニケーションが良いからこそ成立すること。ローカル販社が自分のマーケットに合う商品提案を具体的に行う。その際には、商品化された暁には、これだけの数をしっかり売るとコミットし、販売成果を出すことに全力を尽くす。それが遣りきられることでお互いの信頼関係が向上している。ここから改めてLocal販社としての心得を学ぶと同時に、本社としての構え方を学んだ。僕にとって大変示唆の大きい話だった。

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 Berlutiを語る上で、企業のDNAとして4Cという言葉を使うそうだ。Color,Confort、Creativity、Customer。自分たちの強みだったり大切にしていること、独自性がこの4つのCに込められている。この中で特に僕の興味を引いたのは、Colorの部分。彼らは、直営店で靴の色を染め直すことが出来る技術、オペレーション機能を持っている。ただその色合いを変えるオペレーションを変えると同時に、色合いを変える工程の意味、位置づけを変えている。一色(カカオ)から何色もの靴が作れる。というのが彼らのオペレーション能力なのだが、店舗展開が増えてきた時点でオペレーションを変えている。以前は、半完成品に対して店頭で最終色付けをする。というオペレーションだったが、店舗が増えたいまでは、完成品に対してカスタマイズする意味で色を加える。という方法に変えたそうだ。半完成品オペレーションを聞いたときには、ベネトンのSCMを想起したが、現在のオペレーションからはカスタマーにとってのより付加価値を上げるカスタマイズという位置づけに昇華できている。(そうメッセージを出している)点が素晴らしいと思った。

刺激と学びの多い90分間。Berluti を知らなかった僕でも、いつかはBerlutiと思ってしまう。(実際は、名刺入れ位で限界かな。)そんな講義内容だった。
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僕も寝かしている靴を磨こう。(一応これでも昔は、自称。着倒れ、履き倒れ。主に英国ブランド。Aldenを含めてアングロサクソン系ブランドに嵌っていた。でも、最近履いてないな。。服装も鎧(スーツ)を脱いで久しい。クリエーター気取りからビジネス戦士に戻る日は来るのか。ブルペンで十分肩は作った。出番が欲しい。)

ではでは。
Berluti

Berluti

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Rupt
  • 発売日: 2011/12
  • メディア: ペーパーバック



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