交渉術・外交術 日本人が不得手とされている領域だがこんな日本人もいる。島田久仁彦さん [講義・授業]

この日は、そうとう貴重な体験をさせてもらえた。島田久仁彦さんの講演に参加することができた。正直、講演前には、まったく彼のことを認知していなかった。どれほど貴重な機会なのか理解せずに望んだことに今更ながら恥ずかしさと反省の念を覚えている。

 島田さんの話を聴いていて思ったことがある。なにか以前、おなじような気持ちになったことがあるな。と。元外交官の佐藤優さんの講演会で話を聞いた時二年前に覚えた感覚だ。その日の佐藤優さんのお題は、「民主党の外交はなぜ国益を体現できていないのか」だった。だが聴講していた僕自身には、必要とされるインテリジェンスとは何かを説いたものだったと記憶している。また、その外交官に必要とされる有益な外交を実行するために必要なインテリジェンスが、昨今の外交官を含めた官僚には不足していると嘆いたものだった。http://mike-shimada.blog.so-net.ne.jp/2010-11-26
ちなみに彼の主張はこうだった。
①総合的な教養(実学だけを重視していると総合的な教養がつかない。神学、哲学などの教養を身につける事、高校で身に付けた学力を維持すること。)
②基礎的な学力、数学と日本語(とくに文系の人は数学、微分積分の原則を習得することでロジックを思考に取り入れられるようにすること。)
③語学力が落ちている。(まずは、英語。英語が出来なくて多言語が出来る。というのを聞いたことがない。)
僕らが受けてきた教育方法ではなかなか身につかない、維持できないもの。それが佐藤さんの言うところのインテリジェンスに繋がる。
④情報を得るには新聞を読む事。(読まない人が増えるとすると、新聞の位置づけが益々高まる。)
⑤聖書を読みなさい。(欧米エリート層で新約聖書を読んでいない人はいない。神とディベートしている人たちだからとにかく議論好き)

それらの根拠に関しても、佐藤さんは、触れている。「研修教官をやっていたので分かる。自身、実際モスクワ大学で教鞭をとっていたのでこの手の情報が入ってくる。外務省からの留学生がバンバン落第している。その大きな理由は、数学(線形代数、偏微分)、論理学、哲学史(過去の考え方の型をしらない。)これらの学問が習得出来ていないためについて行けないそうです。モスクワ大学に限らず、ヨーロッパの大学オックスフォードやケンブリッジ大学などでは、こういうことを凄く重視するそうでそれに適合出来ないのが日本のエリート。(エリートですらそうなのですから、日本人の学問はいけていないということ。)」

先日、法木先生がイギリスの大学の特徴を述べていたのを思い出す。オックスフォードやケンブリッジでは、大局的な歴史観を学ぶので大きな潮流を読むのに長けている。世界で何が起きていて今後どうなるか。という予測を得手とする。ただ、難点は長々と文章を書くこと。文字中心の文化であること。コンサイスにまとめるということをしない。(そうなんです。所謂英才教育、帝王学を学ぶには、ヨーロッパ系の大学は良いと僕も常常おもっている。中でも英国系大学は良い。加えて、文字文化中心という点も同感。たとえば地図。彼らは日常生活で地図をあまり使わない。集合場所を全て文字で伝えてくる。たとえば、Oxford通りを1マイルピカデリーサーカス方向に進み、そこのラウンダバードの,,,,といったようにずっと文字だけで表現する。これは、英国人以外には厳しいのではないかと思う。最近は、地図も併用するようになった?)

How to get to.JPG


話を久仁彦さんにもどそう。(自分の苗字と同じ島田さんなのでどうも調子が出ない。以降、ファーストネームで綴ることにする。)当日のお話の中心は、交渉術のテクニックともいえる実践的なものだった。一つ一つのテクニック等に関しては、殆ど僕も知っていた。真新しいものがなかったが、体系だった解説と、メンタルな部分の詳説、そして彼が会得するにいたった背景の凄さに感心しっぱなしの1時間半だった。
 ただ、正直彼自身のスタイル自信、未完成だと感じた。確かに、引き出しは多く、交渉相手がどう出てきても対応出来るフレキシビリティをもって対応できる。交渉の際には、とにかく弱みをみせない。自信をもって対峙する。このことこそが彼の強みのようだが、一つ一つの完成度は実はあまり高くない。というのが僕の印象だ。例えばリーダーシップ論、フォロアーシップ論に関しても専門性は高くない。彼流のリーダーシップ論、リーダーが持ち合わせるものを下記3点だと称している。これはこれで単純化(概念化)されていて分かりやすいのかもしれないが、それを再度複雑化してさらに高度なところまでを求めるところには達していないというのが僕の印象。
①Issueは何か定義が出来る。旗を立てることが出来ること。
②周囲を巻き込める。
③効果をMultipleに掛け合わせることが出来る。

たしかに、別に彼は学者ではないので、それで十分なのだろう。実際、妙に完成度が高くなるとトレードオフとしてリアルな社会で通用する機転の良さというものが発揮できなくなることも多い。そう考えると彼の場合は、それで良いのだろう。

 講演会の後の親睦会で、実はそれを感じていた。ずっと、久仁彦さんとの対話を参加メンバーと楽しませてもらった。切り返しの速さと、引き出しの多さ、そして言い切り型口調に見える自信。(不安要素を見せない。)というのが印象的だった。決して、コメント一つ一つに十分な腹オチ感が十分になくても、それなりの存在感を感じさせる何かがあった。それが交渉に於ける大切さなのだろう。海外と対峙する、すべき立場の人が見習うべき点があったと思う。

とかく、お隣の国韓国と比べられていわれる”交渉力不足、アピール不足”の日本。その日本が学ぶべきところを島田久仁彦さんは示唆してくれているように思った。単なるモノづくり志向の日本がマーケティング志向をもち、交渉力、アピール力を技術力の上に持ち得たなら、輝かしい功績をまた生み出しつつけられるのではないか。という気持ちになれた。

ではでは。

久仁彦さんの講演の中で、記憶に残った話題を幾つか、メモとして残しておく。

■Capitalizm(資本主義)とTalentalizm(人本主義)
 TalentとTalentをつなぐための運動、それがGlobal Leaders。だから集まったメンバーの中でお互いに競い合うのは止めなさい。なるほど、たしかにあるな。自分でも才能、能力を把握している人はとかくぶつかり合う。負けないぞというプライドがある。ときにはそれがいい方に働くが、邪魔することが多い。それをなくそうというはなし。(見出しがあまり適切ではなかったが、Talentalizmの延長でそういう話をされていたと思う。)

■欧米流のリーダーシップを日本人は不得手な理由

■リーダーの定義とは。端的には、自発的に行動に移せる人。それによって周り、組織を活性化出来る人。
反して、フォロワーとは、引き際をわきまえているひと。で、よきリーダーは、フォロアーシップももちあわせていて、時と場合によって使い分ける。

■Quickies
30秒で自分を語ってみる。そういう訓練をしなさい。久仁彦さんのプレゼンスタイルも佐藤優さんや、内田和成さん同様、PPTのようなプレゼンマテリアルを一切使わない。ハンドアウトも無い。ブレッドポイントだけで語るスタイル。これには、彼なりのコダワリがあるそうだ。原稿はつくらない。内容は整理しておく。原稿をつくらないのは、自分の言葉で話すためだそうだ。

30秒でコンサイスに話す必要性は、超多忙なトップに問題→課題→交渉→承認をエレベーターの中で取りきらないといけない立場に板からできるようになったし、そういう訓練をしたそうだ。いわゆるエレベータートークの話だが、それを可也のレベルで昇華させたんだと想像しながら聞いていた。

■行動心理学として、人間は、つかみの20秒で印象が決まってしまう。
 いわゆる真実の瞬間。The Moment of Trouthの話。

■1ページメモ
 どんな案件も必ず1頁にまとめる。時間のない人にインプットする場合には必要なケース。
つまり80%が伝わればよく、100%伝えるために何頁も書く、述べることにこだわらない。
これは、僕自身が海外で仕事をしたときに感じたことと同じ。また、英語が苦手なだけにズルズルかけず、コンサイスに書く事に慣れたのと似ているな。と思って聞いてた。必然性がかなり違うが行き着いたところは似ているかもしれない。

■沈黙の効能
①ペースを変える
人は話を伝える際に大切なのは、ボディーランゲージと声。
話している相手から伝わっているのは、70%がボディランゲージ、20%声、そして10%は中身。

声は、低く。時折、話のペースを変えること。で印象、興味をもたせる。

②無言の能
特に②の無言の効果というのは、よくわかる。
イギリス駐在中に、Keyバイヤー(Dixons,Jessops,Comet)との商談に毎週参加していたが、プロフェッショナルなBuyerほど、無口で無表情だったのを思い出す。反して同僚のSalesは口数が多すぎて商談で条件をもっていかれていた。よく、小言を言ったのを思い出す。これは、経験として納得感がある話だ。

■シガレット・ディプロマシー
 正面に座らない(コーチングで良く言われること。正面は対決の角度。建設的な会話のためには90度の角度で座ること。)
 45度の角度は権威の角度(医師と患者)
 平行に座る(一緒に解決策を探る:友人と勉強を一緒にする時にとる角度はコレ)

 (内田和成先生のコメント。ユニチャームの高原さんは、このあたりを凄く自然に身に付けた方だったという。来賓のお客様に対してもソファーに座らずに目の前にかつ目線の近いところに横にしゃがみこむように近付いて会話する方だったと言う。)

 会議の後の飲み会(飲み会は、①遊びの場であり、②仕事の場である。)→距離を縮じめる。
 仲のいい友人知人としか飲まない日本人が苦手な部分かもしれない。

 タバコは吸わない、島田さんだがタバコ部屋での外交というのがあるとすれば、それに加わらない手はない。会話に加わるために自然にタバコ部屋に潜り込むための術というのを工夫したそうだ。少々変わったライターをもって部屋に入る。そうこうしているうちにポジションを獲得する。なるほど目的のためには手段をもつということのひとつだろう。

■自信がないときは、手を見せるな!
手には緊張、恐怖などの表情が現れる。だから、手の内を見せるなと同じように手は見せないようにする。皇族の方、王室の方々が手を後ろにまわして歩いているのは、その表れだとのことだ。

■確かな価値、自らが意識して取り組むべきこと
 好きなこと&出来ること→忘れてよし。(意識しなくても出来るし上達する。)
 好きなこと&出来ないこと→諦めなければ出来るようになる。ガンバレ
 嫌いなこと&出来ること→出来るんだら好きになろう!
 嫌いなこと&出来ないこと→忘れてよし。(無駄な時間は使わない。長所を伸ばそう)

ではでは。




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