「中間管理層でも経営者の”気持ち”は変えられる!」柳孝一先生 最終講義から [講義・授業]

柳孝一先生には、短期間であったが多大な影響を頂いた。大げさではなく、人生観にインパクトを貰った。縁あって最終講義にも参加出来た事は大変光栄な事だと思っている。
最終講義もべらんめい調の柳先生節が炸裂。心に染み渡る講演だった。

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 柳先生と言えば、大企業を含めた企業革新の必然性とそのために求められる事を流通・サービス業の分析から突き詰められ、さらには多数(約500社にもおよぶ)ベンチャー企業に直接インタビューした結果からベンチャー企業が如何に成長していくか、その際に必要な要素は何かを導き出し、体系化された方だ。実務的な事としては、野村総合研究所の立ち上げや、経営コンサルティング部の創設に参加されたり、多摩大学というベンチャー大学の発展にも多大なる貢献をされたと聞く。突き詰められた企業革新、ベンチャー企業というものを業務のなかでも自ら体現された方だ。


 そのような体験、経験と多数のデータからの帰納法的アプローチから体系立てし、それも学者よりもより実務者を意識した言葉で表現されている点も我々にとって大変ありがたいことだ。理論のための理論ではなく、実務に活かしてもらうための研究アプローチが徹底されていると感じている。(ご本人もそれを目指して来たとコメントされている。)

 柳先生がコメントされた事で心に残ったことを幾つか書き残しておきたい。
「(流通、サービスに於ける「新産業」を調査分析していた当時は)日米の格差が大きかったので先を行く米国事情から日本の将来像が見て取れた。」かなり米国の状況を参考にされたそうだ。【僕なりの想起】これは分野によって特に、インターネット関連の技術、産業、カルチャーに関しては今も言えることなのではないだろうか。全てといって良い程の殆どが、インターネット関連の事情は、米国発になっているのは歪めない。それもシリコンバレー発だ。

「流通・サービス分野における経済の暗黒大陸の解明」1970年代の頃の話だそうだが、「暗黒大陸」という言葉をつかって当時の流通業の先行き不透明だが、巨大な変化がとにかくある。大きな市場である。というのを当時は表現していたそうだ。【僕なりの想起】いつの時代も先行きは不透明。いまもスマホとクラウドによる”モバイル・インターネット”が大きく市場原理を変え、新しいビジネスモデルが次々と生まれて来ている。あまりにも変化のスピードが早い。取り残されまいともがいてはいるがやはり先が見えないという不安を抱えている状況。いつの時代も先行き不透明。なんとかなって来たしだからこそ誰にでもチャンスがある!と思えば気が楽になる。やはり多少は楽観的なほうが良いのだな。と改めて思った。

「流通産業の本質は、「変化対応業」であり、変化しつづけなければならない」(柳孝一 中央公論 1979年)【僕なりの想起】「変化対応業」か。なるほど。流通業に限らず、我々のようなイノベーションを期待されている企業も、「変化対応業」だと認識すべきなのではないかとツクヅク思う。

「売れないものをつくるのが最大の悪!」という柳先生のコメントは痛快だった。「生活者主権時代」と「地球環境問題」によるインパクトを声高に唱えられた1990年代前半からの持論だそうだ。【僕なりの想起】確かに、ビジネスというか商売の本質でもある。と思う。世の中の人たちに貢献する。その感謝としてお金をいただく。利益になる。と思うと、誰も喜ばない(売れないものをつくる)というのは余計なことをしているどころか、環境を悪化させているということ。当たり前の話だが、柳先生から伺うとやはりグッときた。

「リサーチャー(研究員)と経営コンサルタントの違い! この2つは大きく異なる。Resarcherはとにかく客観分析をする事。それにつきる。反面、コンサルタントは、嫌がる馬に水のみ場まで行かせて水をとにかく飲ませる。ことをしなくてはならない。だからこんな柳孝一になったんだ。」【僕なりの想起】何事にもやはり向き不向きというのはやはりあるだろう。熱い部分が無いと、経営コンサルタント業は出来ない。ロジックは鍛えられるが、熱い部分は天性の部分。鍛えようがない。と先日聴いた、三枝匡さんと伊丹敬之さんのコメントを思い出す。このお二人の話は、リーダーとしての資質としてはなされていたのだが何事も真理は同じということだ。


マネジメント・ルネサンス―経営革新プロセスとスキーマ・チェンジ

マネジメント・ルネサンス―経営革新プロセスとスキーマ・チェンジ

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 野村総合研究所情報開発部
  • 発売日: 1987/07/05
  • メディア: -


GE,P&Gなどのグローバル優良企業に直接出向いてインタビューを繰り返した結果をまとめた本。
この本を書く事そのものが、柳孝一先生が所属していた野村総合研究所自身のスキーマチェンジになると思って嫌がる部下達にねじ込んで書かせた本だとか。忙しくてたまらないときに皆で休日出勤をして書き上げた。そいう本。著書にいたる背景を伺うとこの本の意義、意味がさらに重くなる。

「当時の円高不況による八方塞がりの打破」当時1980年代後半の円高のインパクトは、今以上に厳しかった印象だそうだ。【僕なりの想起】やはり我々日本人、なんとか出来るのではないだろうか!と改めておもうのっだった。

「企業は人なり」の原点に立った、日本人の英知を信ずる楽観主義
企業は人で出来ている。日本人はそもそもマジメで優秀、ちゃんとしたマネジメントをすれば必ずついてきてくれる!と信じる楽観論だそうだ。同感!!

「経営革新(戦略)プロセス」と「スキーマ・チェンジ(認識枠革新)」【僕なりの想起】これらの話も三枝さん、伊丹さんの話、示唆と共通している。日本人のための日本人による経営革新、国の再生なのだらから、答えの全てを米国から学ぼうとするのは間違っている。学ぶのは良いが本質を見失わないようにせよ。あくまで本質に拘る事。実際、米国が低迷したころやたら日本に関しての調査分析をやってとにかく何でもとりこもうとしたらしいが、本質が見失われて迷子になっていた。結局、日本に学ぶのは無理(よくわからない国)"朝歌をうたって、体操して。”確かに朝から体動かすと気持ちがよい。でもこれは(日本に於いても)経営の本質には関係の無い事。と行く行くは米国人は気づく。そして、理論:「仕事の流れ」に近づいて行く*価値連鎖・顧客満足・タイムベース競争→リエンジニアリングに結実。三枝匡さんの講演から学んだことは、また後日別の記事にする予定。

 ”戦略と組織双方の革新と相乗結合”いかにも実利をとっとぶ柳先生らしいコメント。企業の本質は、「戦略」と「組織」であり、この双方を変えれば、企業革新は可能。じゃ、どちらを優位に進めるのか。A.D.チャンドラーなどの「組織は戦略に従う」なのか、H.I.アンゾフらの言うところの「戦略は組織に従う」という議論はどちらでもよく、実際結果がでればよい。ということでI.B.クインや、H.ミンツバーグの言う所の「戦略と組織は相互関係がある」が現実的にはもっともシックリくる。という話。まったくその通りだと僕も思う。

「経営革新(戦略)プロセス」と「スキーマ・チェンジ(認識枠革新)」、難しいのはどちらかというとインタンジブルな人の頭の中や、肚の中を本質的に変える事「スキーマ・チェンジ(認識枠革新)」。確かに腹の中まで見えない。本心から認識を変えさせる事は難しい。変わったかどうかを確認する事自体が難しいのだから。

 経営者が変わることがかなりの比重で大切なことになる。という話で今回も強調された。「中間管理層でも経営者の”気持ち”は変えられる!」そうそうなんだ。自分でも会社を変えられるんだ!と今日もまた柳先生に元気づけられた。

「変態」柳先生がよく使われた表現。たしかに自然界における変態がその何かを示唆してくれるようなきがする。(例 ナナホシテントウ虫の変態 この卵がこの幼虫、さなぎ、成虫に。。。想像出来ない。一番感慨深いのは、さなぎの過程かもしれない。。外から見て変化がないとき、内部構造改革としてその時になにが出来るか。ちょっとこじつけ?でもなんとも感慨深い。)
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■ベンチャー企業の定義と位置づけ
 ”高い志”と”成功意欲”の強いアントレプレナー(起業家)を中心とした
 新規事業への挑戦を行う中小企業で
 商品、サービス、あるいは経営システムに
 イノベーションに基づく新規性があり、
 さらに社会性、独立性、普遍性をもち、矛盾のエネルギーにより
 常に進化し続ける企業

我が社も原点回帰→「ベンチャー企業」に戻るときなのではないだろうか。さもなくば
イノベーションを標榜する企業として再生できないのではと思うのだ。

高い志がなにが無くても必要だ。金持ちになろうとして大成功した人は居ない。というのが柳先生の持論。この言葉も何度聴いてもグッとくる。友人にもこの言葉を噛み締めてもらいたくてこの最終講義に誘った。

■独立型ベンチャー成功のための正四面体理論
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 第一面:起業家の起業力
 第二面:対象市場の設定と変革的切り口
 第三面:経営システムにおける変革的ひねり
 第四面:総合的合わせ技

正四面体が隙間無く組み上がっているのが一番強い。が実際は、各辺の中がさが異なり隙間が生じる。だが、その隙間を埋めようとして成長していくことがベンチャーの強さに繋がる。矛盾しているようだがこれが矛盾をマネジメントせよと表現する一つの理由だ。

ベンチャーは、隙間にニッチにキリで突き刺すように市場に入って行かないといけない。
マーケットを新しい切り口で観て行かなくてはいけない。イノベーションというがコレに過ぎない。
(例:テレビ。映像を楽しむ巨大マーケットは存在した。それをお茶の間に持って来た。こう考えると
発想も気がらくだろう。というのが柳節。たしかに、技術で表現するとややこしくなるのだが、やりたい”コト軸”で表現すると至ってシンプル。【自分なりの想起】スマホ+クラウドも”インターネットを持ち歩く。モバイル・インターネットと考えると凄く分かり易いし、なにをしなければならないか分かり易いのではないか。


ベンチャー・マネジメント変革理論(企業も経営者も変態し続けなくてはならない!)

各成長ステージおける経営要素の占める比重は、変化する!しなくてはいけない。


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【自分なりの想起】
我が社も原点回帰せよ。→スタートアップ期の経営要素比率に戻せ!

グッとくる時間だった。柳孝一先生、今後ともよろしくお願いします!!

会計の西山茂先生から最後の言葉も贈られた。贈る言葉も授業同様グッときた。なんかスッゴクうれしかった。
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ではでは。


ベンチャー経営論―創造的破壊と矛盾のマネジメント

ベンチャー経営論―創造的破壊と矛盾のマネジメント

  • 作者: 柳 孝一
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 単行本





実践中小企業の新規事業開発―町工場から上場企業への飛躍

実践中小企業の新規事業開発―町工場から上場企業への飛躍

  • 作者: 柳 孝一
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本



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