【LVMH】ラグジュアリーブランドがなぜ日本には生まれないのか。 [講演会・セミナー]

本日の記事も期せずして高級ブランドの話題。来年2012年4月より早稲田大学ビジネススクール(WBS)にてLVMHモエ ヘネシー•ルイ ヴィトン寄付講座を開設。ということで開講記念シンポジウムが開催された。社外の友人(元会社の同僚、今は独立して起業家、まさにアントレプレナー)と一緒に聴講してきた。会場を見渡すと来期のWBSの進学希望および検討者のための説明会直後にこのシンポジウムが設定されていたこともあって参加者の大半が進学検討者のようだった。が、やはり我が学友も何人も来場していた。

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LVMHは、海外では既にロンドン大学や上海の大学とも交流があるそうだが、日本ではWBSが始めて。記念スベき一日。理工学系専攻者の場合は、よく共同研究ということで学生時代から企業の方との深い交流があるが普通文科系の場合は接触があってもあまり深いおつきあいは無いと思う。学生にとっての良い刺激、モチベーションに繋がるとおもう。こういう産学協同的な活動は大変喜ばしい。(今更ながらに僕自身学生時代に共同研究させてもらった企業には、感謝したいと思う。)

本日の講演は、2部構成でまずは、LVMH ジャパンの社長Emmanuel Pratさんによる基調講演。そして、後半はパネルディスカッション。

Emmanuel Pratさん流暢な日本語での講演だった。(以前、シャネル日本の社長 リシャール・コラスさんの講演も聴講したがあの方の日本語も素晴らしかった。やはりフランス人の方は器用なのかもしれない。http://mike-shimada.blog.so-net.ne.jp/2010-11-12
題目は、Luxury Market Overviewということでラグジュアリー産業の概略を説明いただいた。
その内容から抜粋メモを残しておく。

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★ラグジュアリー製品とは。
品質・価格が高く、それにふさわしい環境で販売されている。(他にも説明があったがこのポイントが僕には残っている。)
★ラグジュアリー製品の市場規模
2011年Estimation ベースで185billion Euro (=20兆円)規模。(ちなみにP&G、ソニーの年商が8兆円前後。日本のパチンコ産業が30兆円程度、日本の自動車産業が50兆円弱。ん〜っ、あまり良い比較事例じゃないな。。。でも、この20兆円の10%2兆円規模のビジネスをLVMHがやっている。ときくとなんか凄いと思う。)
この市場規模も着実に成長を続けているとのことだ。

★ラグジュアリー製品の国別、国籍別市場規模
 エリア別では、ヨーロッパ37%、米国31%、日本11% その他21%
 国籍別では、中国人23%、日本人20%、インド人2%(多い国籍という訳ではなく、書き留められた自分で興味のある数字を書き並べただけなので誤解がないように。)
エリア別と、国籍別とで数字にギャップを感じるのは、おそらく日本人、中国人が自国では購入せずに海外(ヨーロッパや、アメリカなど)に行って、ラグジュアリー製品を購入しているからだろう。
国籍に関しては、新興国とくに中国人の伸びは著しい。というのはこの業界でも同様に言えるそうだ。インドの2%というのも興味深かった。

★ラグジュアリー製品のポートフォリオ
成長率横軸、縦軸競合の厳しさ。という次元でラグジュアリーブランド製品別をプロットさせた図を紹介してもらったが化粧品は、競争も成長も高いが、テーブルアクセサリーは、成長も高く、競合は低め。宝石は、成長はそんなに高くないが、競合の厳しさも相対比較として中間位。このポートフォリオは、かれらのブランド戦略、事業戦略としてかなり意味深いものだろうと感じた。しっかりメモとりたかったな。

★LVMHの企業規模
ラグジュアリー産業の市場規模、産業規模は、185billion Euro.そのなかでダントツで大きいのがLVMHの20billion Euro.こんだけ大きくて利益率が良さそうだから羨ましい。(というか利益率を上げるためにもグループ化した。)
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グループ化したことの狙いは、2つだそうだ。
①Consolidation can being
Globalization
Risk Hedge
Synergy
②Diversification of brand
ちなみに、先日触れたHERMES(エルメス)の売り上げ規模は、LVMHの10分の1 2billion Euro.やはりニッチなビジネス戦略のラグジュアリーブランドのなかでもさらにニッチを目指す戦略。それがエルメス。作り方も見せ方も違う。規模を追わないアプローチになるのだろう。

勿論、LVもことさらに規模を追っているわけではなく職人の育成にお金と時間を掛けながら生産能力を上げて行っているというのを以前、長沢伸也先生の本で読んだ。たがやはり、HERMESの芸術肌に対して、LVの職人肌という事業方針の違いはあるように思う。どちらが良いという訳ではなくポジショニングの違いが様々な形で見え隠れする。ということだ。

ルイ・ヴィトンの法則―最強のブランド戦略

ルイ・ヴィトンの法則―最強のブランド戦略

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



★お金の使い道の変化
 日本も含めて豊かになっていくと”モノよりも旅やレジャーなどへの出費が増えてくる”らしい。確かに以前、NEW YORK TIMESの記事になっていた国民別のお金の使い方でも、欧米は旅行、レジャーに費やす金額が異常に多く、日本などは電化製品への使い方が目立つ。でもその日本も確かに段々、欧米化しているように思う。マズローの欲求の段階などを引用すると上手く説明出来ると常々思っていた話題なだけに素直に聴けた。

スクリーンショット(2013-10-21 5.38.50).png

http://www.nytimes.com/interactive/2008/09/04/business/20080907-metrics-graphic.html?_r=0



★ラグジュアリーブランドLVMHにとって日本市場とは。
これは、シャネル日本の社長がコメントしていたのと似ていて、日本は品質、先進性に関してのテストマーケティング市場だと。しっかりベンチマークし続けたい。日本人の目は厳しく、ブランドを鍛えてくれる。とコメントしていた。

ただ、反面、この前提には多少の矛盾と捻れ現象が隠れている。と思うのだ。確かに、日本という市場は、品質に対しての確かな目を持っているし、新しい物にたいしての正当な評価が出来る市場でもある。これは認めるが、あくまでこれはマスマーケットとしての話。
そもそも、ラグジュアリーブランドとは誰をターゲットとしている、ターゲットとしていたビジネスか?というのがポイント。ラグジュアリーブランドとは、現代日本には存在しないような超ハイソな階級社会の紳士淑女のためのブランド。決して多少のお金持ちのための贅沢品ではなかったのだ。ヨーロッパの高級ブランドの成り立ち、歴史をみればそれがよくわかる。その色を比較的強くのこしているのがエルメスだったりするわけだが。(バーキンなどは受注生産のみで最低でも50万円以上はする。そんな鞄を平気で普段使いするような人が対象。特別な時におどおど使う客層はそもそも対象ではない。)(おそらく、日本にいまでも武家社会、華族社会がしっかりど真ん中として残っていればそういう客層もある程度存在したのだろう。)市場がブランドを育てる、鍛える。というのは確かにあると覆う。そう思うとやはり本当の意味でのラグジュアリーブランドが日本に根付かない理由はそこにあるとおもうのだ。日本はそういう市場ではないということだ。

反面、規模をある程度伸ばしいたいラグジュアリーブランドからすると日本を始めとするアジア諸国は大切な市場。ブランドを生む土壌はなくとも、消費してくれるポテンシャルが高い。そもそもターゲットとしていない客層ではあるが、結果付いて来てくれたお客様みたいな立場ながら数が多い。というところだろう。だが、日本という市場はそれプラスαの魅力があるということだ。想定していたターゲットカスタマーではないにしても規模はあり、さらにモノに対しての評価のただしさ、厳しさがあるということ。実際に、LVの製品の品質を鍛え上げたのは日本人だという話をこれまた長沢先生の本で読んだ記憶がある。日本人がLVの製品を購入する前は、かなり製品バラツキが多かった。縫い目の間隔にバラツキがあったり、微妙に曲がっていたり。少量生産主義だったこともあろうが、そういうのをヨーロッパ人は気にする事もなくそれも商品の味ぐらいにかんがえていたのだろう。なにせ優雅なマダムたちだから。ところが日本人のマス層は違う。工業製品のキッチリ品質管理されたものに慣れている。なんかちょっとした違いとかに敏感。なんかあの人のと自分のが違う。みたいな話になる。結局そういう声をLVも浴びて、作り方、品質管理の仕方を見直したらしい。これが所謂、市場、カスタマーが製品、ブランドを鍛えるという話だ。

この辺りに関しては、遠藤功先生のプレミアム戦略の前半部で見事に解説されていたように記憶している。この部分に関しての記述は的確だと思う。


プレミアム戦略

プレミアム戦略

  • 作者: 遠藤 功
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2007/12/07
  • メディア: 単行本




しかしながら、個人的に思うのです。そもそも売るべき相手以外に買ってもらっていること。ってどうなんだろうか。使用頻度の上がらないお客様に買ってもらっている製品群はやはりどこかでそれに変わるコンセプトのモノが出てくると廃れ始めるのではないだろうか。喩えとして上手くないかもしれないが、ビデオカメラがその類い。むかしなら20万円、いまでも7万円、8万円するビデオカメラ。高額商品ながら何れだけ使うかというと一般的には年に1回もしくは、2回。そういうお客様が多い。勿論、頻繁につかうユーザーも居るが少ない。そいういう頻繁に使うお客様が本当のターゲットにすべきなのだが、あまり使わない人がマジョリティーになってしまっている。デジカメ、スマホなどに動画撮影機能がつくとそういうマジョリティの購買行動、製品にたいしてのアプローチが劇的に変わってくる。市場規模が大きく変化する。なにせ本当のターゲットじゃなかったわけだから離れて行っても自然ということだ。そういう話に似たような事が起きないでもない。と思った次第。

後半のパネルディスカッションは、ラグジュアリーブランドで活躍するには。ラグジュアリーブランドで働いてみたいと思う人へのアドバイス。だった。そのためにMBAは有効か。みたいな話もあった。この話は、機会があればまた後日。

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(実は、以前僕自身がシンガポールでエリアマーケティングに携わっていた頃にある全くの新規カテゴリー製品を扱うことになりラグジュアリーブランドに学ぼうと思ったことがある。なにせ、AV商品しか熱かったことが無かった。その商品はホーム・アクセサリー的な製品。いまから4年前程のこと。その時の教科書が偶然ながらこの本。シンがポールでの部下とこの本を題材に毎晩深夜までどういうマーケティング戦略でその新製品を扱うか議論した。英訳とある程度の解説を僕がして熱く語ったことが懐かしい。それが実を結んでか、その部下が立案、企画した製品も世の中に出た。最終的には、東京本社側にその企画を委ねたがプランは基本シンガポール発だった。そして今、高級店にいくとその製品を置いている店もあるそうだ。感慨深い。そういう思い入れを語りながら、半年前に長沢先生にサインを貰った。サインを貰いに行ったときに言われた。「で、君僕の授業は取っている?」(やっバーっ。。。。)LVMHの寄付講座が出来るなんてそのときは当然、想像もしていなかった。面白い物だ。)

ではでは。

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