「大企業が抱える課題」と「改善されない地震対策の背景」との類似性 [書籍・雑誌]

先日も触れた気がするが、地震の予測ほどやっかいなものはない。あくまで予測でしかないこと。あとは、いずれは必ず起きると分かっていてもどのタイミングで発生するのかに関する時間の幅が多きすぎてその予測が感度たかく受け入れられることがない。実際今回の東日本大震災に関しても、”宮城県沖地震”として”震源規模はマグニチュード7.5. 2020年末までの発生可能性は約80%。連動型ならマグニチュード8前後で、津波の可能性も。。。と少なくとも10年以上も前から島崎邦彦さんら専門家は予測し、公言していたのだ。

何故これをしっかり受け止めて対応を事前に打てなかったのか。とうのはおそらく誰をも責めることは出来ないのではないだろうか。ある種、人間の性みたいなところがあると思う。


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これがその該当ページ。
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同じく、島崎邦彦教授(東京大学地震研究所教授)の言葉にこんなのがある

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■改善されない地震対策の背景
 患者を叱りつける医者がいる。この手の医者の前では、理不尽でも、よくわからなくても、とりあえず殊勝な患者振りを見せておくに限る。調子が良くなれば、医者とのつきあいもそれまでと、自分の好きなようにする。だから身体の方は元の木阿弥、事態は何も改善されないことになる。話は突然変わるが、地震学者は他人を脅かすだけ脅かすのがよい、という人がいる。実際に地震の対策を少しでもじっくする人は稀だ。だから、少し脅かしたくらいでは何にもならない、というのだ。
 脅かす地震学者と叱りつける医師は、どこか似ている。一時的には、改善されても、効果が長続きしないところだ。納得せずにしたことは身につかないから、だろう。阪神、淡路大震災の直後に静岡県で行われた調査と、そのさらに4年後の調査とを比べてみよう。地震後には、被災時の集合場所をきめている人が34%だったのに、そお後21%と13ポイント近く下がっている。非常持ち出しの用意をしている人は50%近かったのに、その後40%をわて、ほぼ10ポイント下がった。食料、飲料水の備蓄も同様、喉元元過ぎれば何とやら。熱しやすく冷めやすいのが我々の体質だ。空騒ぎで終わらないようにするにはどうしたらよいのか。

■防災グッズでは助からない。
 具体的な地震対策の例が出たので、これについえも考えてみよう。防災グッズを常時揃えている東京・池袋の東武百貨店の売れ筋トップ5は、保存飲料水(2種)、乾パン、餅、アルファ米である。地震対策と言えば、非常食、飲料水と非常持ち出し。マスコミに洗脳されたようだ。
 阪神・淡路大震災で命を奪われた人は、非常食や飲料水の用意を怠った人だろうか。非常持ち出しを用意しなかったばかりに命を亡くしたのだろうか。答えは、ノーである。実際には、地震の揺れで家が倒れて下敷きになった人が殆どだ。非常時持ち出しや食料、飲料水の備蓄前に、まず命が助からなくては話にならない。
 自分が助かろうと思うならば、まず住んでいる家を地震に強くしなくてはならない。家具の転倒防止も重要だ。数千円の買い物で安心できる話ではない。非常食、非常時持ち出しキャンペーンは、手じかに買える安心で、本質を隠す謀略ではないかとさえ思える。家を地震に強くするには、納得づくで取り組まなければならない。正直なところ厄介な話だ。
 だから、じっくり話をしたいし、じっくり聞いてほしい。ちゃんと納得した上で、地震対策に取り組んで欲しい。医療で言えば、インフォームド・コンセントこれがこれまでの地震の話に賭けていたのではないだろうか。

(”あした起きてもおかしくない大地震”集英社刊 島崎邦彦ほか 監修・抜粋 より抜粋)

読んでいてつくづく思ったのが、企業が抱える課題とくに大企業が抱える課題との類似性だ。トップマネージメントが大号令を発する。部下たちは、納得していない(理解しようともしていない)がとりあえず、指示にしたがう。(ふりをする。)たとえ、実際のアクションを起こしても魂が入っていないので成果は出ないし、継続性のあるものにならない。

これは、部下たちの態度に課題がありそうだが、実はトップマネージメントにも大きな問題がある。方針出しをするときに掛け声ばかりで内容がなく、具体性がない。そういう打ち出ししかでいない。現場を理解していないので表面的な話に終始して本質的なところも捉えられていない。よほど、部下たちの方が現場、現状を知っているのでそういう部下ほど不信感を覚える。(そういう部下こそ優秀だったりする。実践力があるのだがそういう彼らに納得感をもたせられないと何も結局動かない。困ったことにそういう実践力があり現場をしっているスタッフほど、トップマネージメントから遠かったりするのだ。美辞麗句を並べるだけの人間やロジック先行型の人間がトップの傍についている例が多い。)

加えて、大企業における(経営上の)危機意識に関しても類似性を感じる。いくら危機感を持とう。フンドシをしめなおそうと言っても、結局のところ本心から危機感をもてる社員は少ない。大企業ほど、多角経営化していてもたれあい体質が浸透していたりしいたりする。以前にも経営が苦しくなったことがあっても、どこかの部署がヒット商品を出すことで回復した経験などを持っていて今回もどこからかヒーローが登場するのでは?という根拠のない期待ばかりして現実を直視用としない。危機感の風化という点でも類似性を感じる。

会社の寿命もいつくるかわからない地震と同じでいつかは果てる。でも、自分が働いている間は大丈夫だ。と根拠のない希望観測的な考えをみんな持ってしまう傾向が大企業はどうしても強いようだ。

そういうことが結局は、大企業病の症状である“無視、無知、無関心”そして部署間のサイロの形成にもつながるのだろう。

島崎さんがテレビ番組で地震のメカニズムや歴史について説明されているのを観て興味をもって、早速中古本を購入してみたが地震に関しての知識としてのみならず、生き方の教訓、企業論、組織論まで考察できる素材が満載の本だ。買ってよかった。


ではでは。




あした起きてもおかしくない大地震 21世紀地震アトラス (21世紀・地震アトラス)

あした起きてもおかしくない大地震 21世紀地震アトラス (21世紀・地震アトラス)

  • 作者: 島崎 邦彦ほか
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2001/07/05
  • メディア: 単行本



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通りすがりです

被害にあわれた方々に哀悼をしつつ

「近年に絶対起こる」と言われていた大地震・大津波で、
簡単に水に浸かる原発(の非常電源)や物資の保管場所…
などなど、行政は対策何してたん?と思ってしまいます。
道路や港が壊れるのは当然なので、何か画期的な輸送手段
は今回もなかったなぁ…と残念に思います。

防災グッズについては、家の耐震工事は簡単にできる資金
がありませんので(集合住宅も然り)、倒壊で助かる事は
いわば神に祈りつつ、助かったときの避難所生活を考えて
の行動ではないでしょうか。
by 通りすがりです (2011-03-20 12:36) 

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