【大事にしたい会社を探して】「会社には、幸せの想像責任がある。」法政大学大学院教授 坂本光司さん(その2) [新聞]

【大事にしたい会社を探して】  法政大学大学院教授 坂本光司さん(その2)
これも朝日新聞掲載文からの引用。(いわゆる転写)良い記事なので漏らさず書き留めておきたい。
朝日新聞 2012日3月31日(土) be on Saturday
文:立松真文

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「会社には、幸せの想像責任がある。」
ーーー人を大切にする会社を紹介した本が、なぜこれほど注目を集めたのでしょう。
 研究者になってから一貫して同じ事を言い続けてきました。世の中が変わったのです。バブル崩壊後の20年間、「自分の会社の何かがおかしい」という違和感を抱いてきた人が多い、ということでしょう。最近の私への講演依頼の数も尋常ではない。メールを開くのが怖いくらいです(笑)。

ーーー会社訪問ではどんな所を見るのでしょうか。
 まず社長さんの経営に対する思いをジックリ聞く。そして、工場など現場に行き、社員の顔つきを見る。うちひしがれた顔をしていないか。障害者の雇用率や、社員への研修や教育ににどれだけ時間をかけているかも尋ねる。技術レベルやシェア、価格競争力といった事を聞くのは、一番最後です。

ーーートイレも見るとか。
 いくら社長さんが格好良い事言っても、トイレや社員食堂を見れば、社員を大切にしているかどうかすぐに分かる。
 お年寄りだったら転倒してしまいそうな和式便所。社員の唯一の憩いの場である食堂は地下のジメジメした場所にある。それでいて、社長室は日当りが良くて風通しがよい。そんな会社も沢山あります。現場を観た後に業績を尋ねたら、「うまくいかないんです」と返ってくる。それは当たり前でしょう。と言いたくなる。

「人本主義」
ーーー経営の目的とは?
 多くの教科書には、成長する、業績を高める、ライバル企業を打ち負かす、それが経営学の目的だと教えている。でも、私が提唱したいる「正しい経営」とは、人を犠牲にしない、路頭に迷わせないという経営です。会社に関わりのある人を幸せにする活動こそ、経営だと思っています。業績や業界シェアなんて、結果としての一つの現象に過ぎません。

ーーーといっても業績をきにしないわけにはいかない。
 業績や利益を軸に経営を考えるから、おかしくなるのです。
 コスト削減のために正社員を非正規社員に置き換える。社内で遣るべき仕事をきついとか汚いと言って外注する。3人でやるべき仕事を2人でやらせる。。。そんな事をしていたら、それは、社員がケガしたり、うつになったりします。業績ではなく、社員の幸せを軸に考えるべきなんです。

ーーーでも、それでやっっていけるんでしょうか?
 私が回った6600社の会社のうち1割は、好況でも不況でも快進撃なんです。その会社のヒアリングをすると、共通項は社員を大切にする「人本主義」を貫いているということです。業績を高めたいと意図して、達成した好業績ではない。
 社員が自分の所属する組織に愛情を持てば持つほど、業績が上がるのは当然の話なんです。自分の所属する組織に不満や不信感を持っている人間がお客様にニコニコ顔で対応出来るでしょうか?
 自分が虫けらのように扱われていながら、その経営者や上司のために一生懸命働こうと思う人は、そういません。

ーーー社員のモチベーションを高める事が大事だと。
 安定的に業績が高い会社で、社員のモチベーションが低い会社ではありません。だから、経営者には言います。あなたが高めるのは、社員のモチベーションであって、業績ではない、勘違いしないでくださいと。業績を高めるのは、社員の仕事なんです。

口とペンで

ーーー海外との競争も激化し、中小企業の経営環境はますます厳しくなっています。
 新興国に価格競争で勝てる筈はない。だから、信頼性、メンテナンス、独自の技術など価格以外で勝負するしかありません。これは、大企業と中小企業が一体となって取り組めばいいことです。国内の雇用を拡大して、それでも供給が追いつかないというのなら海外に出てもいい。でも、円高のために国内の工場を閉鎖して、人件費の安い海外で生き延びようとしている会社も多い。あなたは、いったい何の為に経営しているのですか、と言いたくなる。

ーーー大企業の意識も変わる必要があると。
 例えば、年収でみれば、大企業と中小企業では倍程も格差があるのに、下請けに一方的にコストダウンを押しつける。立場が逆だったら、あなたはどう思いますか、と聞きたい。
 私の本を読んだという大手企業の資材担当課長の方から手紙をもらいました。「私は下請けの状況を知っています。私が発注するその単価では、うちにしか利益が残らない。下請けは真っ赤っかの赤字です。それでも会社はコストダウンを求めてくる。私はこれ以上、言えません。イヤになります」と書いてありました。

ーーー講演、執筆、講義、会社訪問と超人的な忙しさです。
 働く場である会社こそ、人に幸せを提供できるのです。会社には雇用責任だけでなく、幸せの創造責任がある。会社が変われば、社会が変わる。傍観者ではいけない。私は行政マンでも銀行員でもありません。学者という立場で、この口とペンを通じて、出来る事をし続けて行きたいと思っています。

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